第9回日本ラブストーリー大賞 1次選考あと一歩の作品(15)

『焔~義経を追って~』/松島 美穗子 

 あらすじ&コメント

大学で歴史の研究をしている喜多見月子は、友人の朋人が発明したタイムマシンで、平安時代にタイムスリップする。並々ならぬ執着心を燃やす研究対象、源義経に会うために……。「平月子」として目覚めた彼女は義経との接近遭遇を目指すが、やがて、自分に想いを寄せる平有盛と恋に落ちる。平氏滅亡までもう時間がない。この人を死なせてはならない。

武器は、これまで研究してきた平安時代の知識。月子は果たして、歴史を変えることができるのか!?

一ノ谷、壇ノ浦と、史実に基づき徐々に平氏滅亡が近づいていくという構成が巧みで、タイムリミットサスペンスのようなドキドキを味わうことができました。平氏の武将たちの描き分けもすばらしく、平安時代のパートはエンターテイメントとして高いレベルにあると思います。

「読ませる力」は十二分にあるのですが、一方で、設定の甘さに気になる部分があります。たとえばタイムマシン。説明が簡単すぎるので、どういう仕組みでタイムトリップできるのかが飲み込みづらく、ここでつまづいててしまう読者も多いのでは。さらに、タイムマシンの完成に寄与した「魔王尊」という存在があまりにファンタジックで、作品全体にマッチしていないのが非常に残念。

「歴史もの」「タイムトリップもの」「ファンタジー」と三つのジャンルが混在しているので、整理してみてはいかがでしょうか。次回はぜひ、「歴史もの」に絞った作品を読んでみたいと思いました。

あと一歩の作品一覧に戻る

一次通過作品一覧に戻る